昔の話をしよう

下北沢で友達と飲む。その友達は出版社で経理をしていたが、その出版社の一部がどこかの会社に吸収されることになって辞めなくてはならず、妹がフランス、お父さんがイタリアにいるのでしばらくのんびりしてこようと思うよ、と言っていた時に次の就職が決まり、結局一週間しか休まずに、しかもその一週間も前の会社に手伝いに行ったりして過ごし、また超多忙な日々を送っている、という偉い人である。

その友達が、知り合いの鬱の人の話をしてくれた。その人は休日に会社に行ってしまうらしい。といっても間違えて出勤するのではない。「休日なのも仕事がないのも分かってるけど、会社に行ったら何かがあるかもしれないからどうしても行かなきゃならない」と思うらしい。これは病気についてよく分からない私でも、ちょっと危ないんじゃないか、という気がする。

忙しい会社では「シャツは着たのですが、ネクタイが結べないんです」と言って電話してくる人がいるそうだ。冗談でもなく、サボりでもなく、本当に結べないらしい。そういうことに慣れている上司は、ゆっくり休みなさい、と言うそうだが、そうと分かってくれる上司はいいけど、普通なら、ふざけるのもいいかげんにしろ、と言われそうだ。いや、電話の声で、本気かどうか、分かるかもしれない。分かるだろう。きっと。

その後も学生時代の話をして飲む。長くなるから詳細は書かないけど、人に「一発殴らせてください」と言ったという話をしてくれた。こっちは真面目なんだよ、と。そう、彼は悪くない。しかし、殴らせてくれ、とは。自分の友達にこんなやんちゃな人がいたことを知り、私は驚いたのだった。